古田一さんは、螺鈿と蒔絵の技術を習得されており、作品はその両方を兼ね備えた荘厳なデザインが特徴的です。
【作家略歴】
1978年 愛知県稲沢市生まれ
石川県立輪島漆芸技術研修所卒業
蒔絵師 座間 亘氏に6年間師事、蒔絵の技術を修得
2002年 第33回東海伝統工芸展 松坂屋賞
2010年 第63回瀬戸市美術展 工芸美術部門 大賞
2015年 第46回東海伝統工芸展 名古屋市教育委員会賞
2018年 第49回東海伝統工芸展 丸栄賞
2018年 第71回岐阜市美術展 工芸部門 優秀賞
2019年 第72回岐阜市美術展 工芸部門 市展賞
2020年 第51回東海伝統工芸展 中日賞
2020年 第67回日本伝統工芸展 初入選
2021年 第51回東海伝統工芸展 東海伝統工芸展賞
七:漆芸の道へ進まれたきっかけはありますか。
子供の頃から図画工作など、芸術やものづくりの教科が好きだったからというのが原点になっていると思います。数学や英語などのいわゆるお勉強という科目よりも、自由な発想ができる図画工作で先生たちからも評価されたということもあり、将来はものづくりが向いているかも、と漠然と思うようになっていました。工芸の中で、漆芸を選んだのは当時周囲に漆をしている人が少なかったから、という理由です。
七:古田さんの作品は繊細な蒔絵が特徴的です。蒔絵の魅力はどんなところでしょうか。
当時は、下地、塗りの職人を目指していたのですが、ご縁があって蒔絵師の座間亘氏の工房にお世話になることに。そこで蒔絵の魅力にどんどんと嵌っていきました。漆黒と金の彩りは文句なく美しいと思っています。
七:作品に螺鈿も取り込まれていますね。
漆芸を始めたばかりの頃、訪れた正倉院展で出品されていた螺鈿箱を見て、震えるほどの感動を覚えました。数年後、螺鈿の重要無形文化財保持者である北村昭斎先生の講習を受けることができ、それ以来、作品に取り入れています。
七:創作のインスピレーションはどこから?
花、自然、古典作品、絵画、化粧品のポスター、女の人の横顔、など、日頃から「綺麗だなぁ」と思うものを見て、自分の脳の引き出しにしまっておきます。図案日誌も作成していて、普段からデザインを考えています。
七:今年の東海伝統工芸展では、荘厳な琥珀螺鈿蒔絵六角箱で東海伝統工芸展賞を受賞されました。
六角型という形を生かし、引き立てる加飾を心がけました。特に図案で苦しむことはなく、さっと仕上がった感じです。作品の制作には、多くの金粉や螺鈿など、毎回高額な材料費がかかるのですが、怖くて夫には報告していません。作品を制作するときは、必ず何かしらの結果を出さなければ、という背水の陣を敷いて臨んでいます。でないと、家族に申し訳ないので。
七:今後のご活動について教えてください。
今までどおり、自分が美しいと思うものを製作しながら、公募展に出展していけたらと思っています。あと、金継ぎ教室の講師も担当しているので、今後はこういったワークショップの開催もしていきたいなと考えています。
七:ありがとうございました。